こんにちは!障害者ファイナンシャルプランナーの山口真未です。

前回の記事で、iDeCoの制度について紹介をしました。
そして「障害者の方は、よく考えてから」ということも書きましたね。
でも制度を知ると、「お得そうだし、やってみたいよ!」「ネットでも本でも、やらなきゃ損!って書いてあるし」とも思います。
しかし私は、障害者の方にiDeCoはオススメしません!
ここでは何故、iDeCoをオススメしないのか、3つの理由を紹介します!
(もしiDeCoって何?制度の内容がイマイチわからなくて、という方。こちらの記事を参考にしてください!)
そもそもiDeCoって障害者でも、障害年金を受け取っていてもできるの?

iDeCoが気になると、少し疑問になりますよね。
「iDeCoに加入するために、障害者であることは関係あるのか?」
「iDeCoって『自分年金』ってことだけど、障害年金を受け取っていてもできるの?」
まずはこの疑問から解消します!
答えは、YES!!
(※画像はクリックすると大きくなります)
iDeCoは障害者であることも、障害年金の受給も関係なく、加入できます。
少し不安になるのが、障害年金を受給している方。
障害年金を受給中の方は、国民年金保険料の場合、申請すれば保険料の納付が免除になりますよね。
もし障害年金の受給に伴って、国民年金保険料の「法定免除」をしている場合でもOK!
例外として、iDeCoに加入できるようになっています。
ただし障害年金の受給以外の理由で、保険料の免除(一部免除を含みます)をしている場合。
例えば、失業に伴うもの、収入の減少などを理由とした場合は、iDeCoに加入できません。
免除となった理由に注意が必要ですね。
「特別なこと」はなし!
加入できると分かったら、何か特別な事はないのかな、とも思います。
こちらに関しては、iDeCoに「特別な取り扱い」はありません。
あくまでも掛け金は、職業等で決まりますし、所得控除の条件も同じです。
またiDeCoの運用に伴う利益が非課税になることも、変わりありません。
詳しい掛け金が知りたい方は、こちらを参考にしてくださいね。↓
iDeCoは障害者にオススメできない!3つの理由とは?
iDeCoに加入するには問題がないのに、なぜオススメしないか。
iDeCoは一定の税制優遇の代わりに、少し厳しい条件があります。
その条件が障害者の方には、大きなハードルとなる、と考えます。
障害者FPがiDeCoはオススメしない、3つの理由を紹介しますね。
60歳まで受け取り不可
大きな理由の1つ、「60歳まで受け取り不可」というiDeCoの制度。
これはiDeCoがあくまでも「自分年金」で、老後の資金作りの手助け制度だからこその条件。
もちろんお金があるだけ使いがち、という方には、使い過ぎ防止にもなります。
ただし裏を返せば、何があっても60歳までは使えない、ということ。
- もし長期入院で、生活費に困ったら。
- もし家のバリアフリーが必要で、まとまったお金が必要になったら。
こんな理由であっても、iDeCoのお金を使うことはできません。
障害の程度や状況にもよりますが、未来予測が難しいコトありませんか?
特に独身の方、お子さんがいる方は、”もしものとき”にリカバリーが難しいのも現実です。
生活費を削る、学費を削るにも限度がありますし、ましてや医療費を削るなんて命に関わることも。
将来まで、しっかり計画しても、計画通りとはならないこともあります。
その時に「お金が自由に使えるか」は、重要なポイントですよ。
障害給付金は受け取れない
iDeCoの加入者や加入していた者が、所定の障害を負った場合。
「障害給付金」という形で、iDeCoに積み立てたお金を受け取ることができます。
これなら60歳まで受け取れなくても、「障害が悪化したらお金が貰えるのでは?」とも思いますよね。
しかし!障害年金の受給者の場合、「障害給付金」が支給されることは”ほぼ”ありません。
なぜか、というと障害給付金の支給の要件に理由が隠されています。
ただし、70歳に到達する前に傷病によって一定以上の障害状態になった加入者等の方が、傷病が続いた状態で一定期間(1年6ヵ月)を経過した場合には、障害給付金を受給できます。
iDeCo公式サイトより
注目するべきは、「一定の障害状態になった加入者等」という表記です。
これは運用機関によっては、「政令で定める高度障害となった場合」と書かれているもの。
iDeCoでいう「一定の障害状態」や 「政令で定める高度障害 」とは、どういうものか。
(※この条件は運用機関によって異なります。詳しくは加入している運用機関の条項を確認ください。)
iDeCoの場合は、この条件を満たすことで、申請をすれば障害給付金を受け取れるお金。
障害年金を受給している人は、既にこの条件を満たした状態で、iDeCoに加入していることになりますよね。
そのため残念ながら、支給要件には該当しない、と考えられます。
ただし障害厚生年金3級を受給している方、また障害者手帳でも条件に該当しない方。
将来、障害年金の1級を受給することになった、障害者手帳の更新で等級が上がった場合、障害給付金の請求ができる可能性があります。
その時は将来を見据えて、障害給付金の請求をしましょう。
自分の責任で受け取りまで運用する
3つ目の理由が、掛け金の拠出から受け取りまで、自分で運用する必要があることです。
「自分年金」の言葉通り、自分でいくら積み立てをして、どこで運用するかを決められるのがiDeCoのメリット。
また積み立てたお金を、いつから、どのような形で受け取るのか、も将来は決めることになります。
言い換えれば、「60歳の受取時まで、自分で決められる状態であること」が必要。
例えば、私の病気の場合はいずれ体が動かなくなり、自分で何かをすることが難しくなります。
果たしてその状態で、銀行等の手続きができるか?と考えると、厳しいことが予想されます。
もちろん、これは私の場合であって、全ての障害者に当てはまるとは考えていません。
ただし60歳の受け取りのときまで、自分で手続きをして、どのように受け取るかを決める必要があること。
これはiDeCoを始める前に、一度、考えるべき点では?
メリットを活用して○○な方にはオススメ!

ここまでiDeCoをオススメしない理由を紹介しました。
しかし実は、きちんと未来を見据えてライフプランを作った上でなら、iDeCoがオススメできる方もいます!
ここではライフプランを作った上でという前提の基、iDeCoがオススメになる人を紹介します。
収入が多いため所得控除を使いたい人
iDeCoのメリットの1つが、所得控除による税金の節約ですよね。
iDeCoの掛け金は、全額「小規模企業共済等掛金控除」として差し引けます。
これは収入が多い人にとっては、大きなメリット!
- 収入が多いし、少しでも所得控除を使って節約して、未来へお金を積み立てたい。
- ライフプランもしっかり作って、当面のお金は用意できている!
- 既につみたてNISAも、毎月の貯金もできている。
もう少し貯蓄に回せそうだから、プラスでiDeCoもやりたい!
この全てに該当する方には、iDeCoもオススメできます。
メリットを活用できたら、その分しっかり老後への資産作りができることは間違いありませんね。
死亡保険の代わりに使いたい人
2つ目は死亡保険の代わりに、という使い方です。
実はこれ、iDeCoの「正しい使い方」とは、ズレています・・・。
ただし障害者の方には一定のメリットがあるかな、と考えます。
そもそもiDeCoは、解約できる理由に制約がありますよね。
この2つ目の死亡によるiDeCoの解約。
正しくは、ご遺族となった方が「死亡一時金」を受給することができます。
障害者の方の場合、一般的な民間保険会社の死亡保険には、なかなか入れない場合も多いですよね。
その点、iDeCoはなら以下のようなメリットが。
- 保険のような申告事項がないため、確実に加入できる。
- 所得控除により税金の節約になる。
- 運用している商品に対して、利益が出ても非課税。
メリットを活用して、死亡保険の代わりのようにお金を積み立てることができます。
ただしあくまで、iDeCoの「死亡一時金」は、積み立てたお金の範囲内での給付。
保険会社の死亡保険のように、払ったお金以上に貰えるわけではありません。
またiDeCoは、ご遺族による請求が必要なため、家族で情報を共有することも大切!
自分で払った分だけとはいえ、銀行に預けるだけでは、ほとんど増えない資産。
もしもの時を考えて、運用して資産を増やす、との考えでiDeCoを活用する方法もありますよ。
よ~く考えてからiDeCoを始めて

iDeCoは最初にお話した通り、障害があること、障害年金を受給していることは関係なく加入できます。
ただし3つの理由で述べた通り、オススメできない理由があります。
特に障害者の方の中には、将来の見込みが難しいこと、何かあったときに収入のリカバリーが難しいこともありますよね。
そのハードルを越えるには、老後の資産作りをしたい、という目的だけでは大きなデメリットがあること。
もしものときiDeCoの利用が、自分だけではなく家族まで影響があること。
しっかり考えて、ライフプランを作ってからiDeCoを利用してくださいね。
ファイナンシャルプランナー 山口 真未
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