成年後見制度とは?~障害者でも使えるの?~

家計・ライフプラン
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こんにちは!障害者ファイナンシャルプランナーの山口真未です。

まみ
まみ

記事のポイント

少子高齢化と言われるようになって、はや数十年ですよね。

時代の変化とともに、使う方が増えている制度の1つに、「成年後見制度」があります。

この制度、よく高齢者の方に対して、認知症や介護の段階で話題に上るもの。

ただし、障害の内容や程度によっては、いつか利用するかもしれない。

なかなか聞きなじみのない制度について、わかりやすく紹介していきますね。

「成年後見制度」ってなに?

成年後見制度とは、認知症や知的障害等を理由とした、判断能力の不十分な方々の財産を守るための制度です。

例えば、預貯金や所有不動産の管理、施設への入所の手続き等を、本人に代わって代理で行ってくれるもの。

他にも高額な契約を結んでしまった、という場合は、代理人による取消権で保護できる等もあります。

成年後見制度のポイント
  • 成人のみ利用できる
  • 「判断能力」の有無が重要
  • あくまで、本人の保護と支援が目的

なお、この後出てくる言葉の紹介を、簡単にしますね。

「後見人」とは、支援をする側の方を指します。

少し混乱しがちかと思いますので、ココだけ抑えてくださいね。

なお、支援を受ける側の方を「被後見人」と言いますが、このブログでは使っていません。

公式のパンフレット等では出てくる言葉ですので、一応押さえておきましょう。

「法定」か「任意」かで大きく変わる

成年後見制度には、大きく2種類に分かれています。

それが「法定後見制度」「任意後見制度」です。

制度の違い

(※画像はクリックで大きくなります。)

大きな違いは、今の状態がどうなのか、ということ。

法定後見制度の場合は、「本人の判断能力」次第で利用できるかが変わります

その反面、任意後見制度の場合は、今の状態は心配なくとも、将来の為に結ぶもの。

そのため将来、「本人の判断力が不十分になった」場合に、初めて契約の効力を発揮します。

簡単・比較表

簡単に「法定後見制度」と「任意後見制度」の比較表を紹介します。

個別の詳しい内容等は、この後の記事を参考にしてくださいね。

なお費用はあくまで一例のため、各家庭裁判所や専門職の方へ依頼した費用次第で変わります。

(※画像はクリックで大きくなります。)

※1 家族の場合はゼロも多いが、専門職に依頼する場合は、月額で数万円程度かかる。

法定後見制度

まずは「法定後見制度」の内容から、紹介しますね。

判断能力のタイプで3つの区分がある

成年後見制度の中でも、法定後見制度は、さらに3つの区分に分かれています。

判断能力に応じて、後見人が出来ることも変わっていきますよ。

なお、「後見」>「保佐」>「補助」とイメージしてもらえば、分かりやすいかなと思います。

(※画像はクリックで大きくなります。)

※1 ただし、日用品の購入など日常生活に関する行為は除く
※2 民法13条1項にあげられる行為

後見人にできないこと

後見人は全ての行為ができる、というわけではありません。

代表的な「できないこと」を紹介しますね。

後見人には「できないこと」
  • 食事の世話や実際の介護等
  • 医療行為への同意
  • 身元保証人等になること
  • 住む場所を決めること
  • 結婚や離婚、養子縁組等の代理
  • 遺言

他にも、日常で使う物の買い物等もあげられますね。

誰が選任されるの?

基本的には、成年後見人になるために、特別な資格等は必要ありません

あくまで法律上は、成年後見人になれない人(=欠格事由)のみ記載されています。

成年後見人の欠格事由
  • 未成年
  • 過去に後見人を含む法定代理人を解任されたことがある人
  • 破産者
  • 被後見人に訴訟を起こした人とその配偶者
  • 行方不明者
  • その他不正な行為を行うなど後見人に適さない経歴がある人

では、いざ誰が選ばれるのか。

あくまで家庭裁判所が選任をするため、申立てた本人や家族等が希望した人がなる、とは限りません。

希望を伝えることはできますが、決定権はない、という点が注意です。

また家庭裁判所が必要、と判断した場合は、後見人を監督する人が選任されますが、こちらも決定権はありません。

かかる費用は?

利用するまでの準備期間と、利用中にずっとかかる費用、の2パターンがあります。

また、専門職(弁護士や司法書士等)へ依頼するかでも、大きくお金が変わるのが特徴です。

【利用するまでの準備期間】
※各家庭裁判所によって異なります。

  • 申立手数料(貼用収入印紙):800円
  • 登記手数料(予納収入印紙):2,600円
  • その他
    郵便切手(予納郵便切手):約3,200〜3,500円程度
    鑑定料(医師による鑑定):10万円以下
    戸籍謄本や登記事項証明書、診断書等:数百円~数万円
  • 申立て手続きを専門職に依頼した場合は、その費用:10万円~30万円程度

【利用中にかかる費用】

  • 後見人への報酬が発生するが、家庭裁判所が仕事内容や資産等により判断される。
  • 管理する資産の額に応じて、報酬も高くなる傾向。(概ね月額、数万円以上)
  • 後見人だけでなく、後見監督人が選任された場合は、後見監督人にも報酬が発生する。

詳しい金額が知りたい方は、法務省のHPまたは家庭裁判所の公表をご覧くださいね。

参考リンク

法務省 成年後見制度・成年後見登記制度(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji95.html

裁判所ウェブサイト (https://www.courts.go.jp/

任意後見制度

次に、「任意後見制度」について、紹介しますね。

どこまで利用するか、決められる

任意後見制度は、あくまで本人の判断能力があるうちに自分で後見人を決めておく、という制度です。

例えば「将来の認知症の進行が不安」だから家族と契約を結んでおく、というパターンが考えられますね。

メリットは、
自分で後見人を選ぶことができること
お願をしたい内容を事前に伝えることができる
点です。

そしていざ「本人の判断能力が衰えてきたな」となったときに、家庭裁判所に申立てを行い後見の開始となります。

なおその際には、「任意後見監督者」という、後見人を監督する人が家庭裁判所により”必ず”選ばれます

これは後見人が家族であっても、例えば財産の使い込み等が発生しないように、というための措置ですね。

誰が後見人になるの?

基本的には、両者の合意のもとによる契約のため、自分で選ぶことが可能です。

契約書には、どのような内容を、どこまでお願いするのか。

その際は、どれくらいの支払いを行うのか等を記載します。

なお任意後見契約書は、公証役場にて公正証書で作成する必要があります

何でもOKというわけではないので、注意ですね。

またあくまで、判断能力が低下した場合に、効力を発揮する契約書とも言えます。

もしかしたら使うタイミングがなかった、という場合もありますね。

かかる費用は?

任意後見制度の場合は、公正証書を作るタイミングと、実際に後見を開始した後にかかる費用に分かれます。

また、専門職(弁護士や司法書士等)へ依頼するかでも、大きくお金が変わるのが特徴です。

【公正証書を作成する】

  • 公正証書作成の基本手数料:11,000円
  • 登記嘱託手数料:1,400円
  • 法務局に納付する印紙代:2,600円
  • その他
    正本等の証書代や切手代等
  • 申立て手続きを専門職に依頼した場合は、その費用:10万円~15万円程度

【利用中にかかる費用】

  • 後見人への報酬:家族の場合はゼロも可能。専門職の場合は、概ね月額で数万円以上。
  • 任意後見監督人へは、概ね月額で数万円程度。

障害者でも使えるの?

では障害者の場合でも、使えるのか?と気になる部分を、ご紹介しますね。

ただし、ココではあくまで一例のみの紹介となります。

ご本人の状況にもよりますので、その点はご了承くださいね。

誰が使うか、状態はどうか、にもよる

まず大前提として、保護を受けるのが誰なのか、ということ。

そもそも成年後見人制度は、「本人の判断能力があるか」が重要です。

その条件には、障害の有無等は記載がありません。

言葉が難しいですが、「障害」と「病気」は、必ずしもイコールともならないですよね。

そのため、あくまで誰が受けるか、また本人はどのような状態なのか、に関わります。

よって障害者だから絶対使える、とも言えませんし、使うべき制度とも言えません。

では障害者の場合で、使うことができる一例を紹介しますね。

一例:身体障害者の場合

身体障害者の方で、身体は動かしづらいが、判断能力はある、という場合。

基本的には、成年後見制度を利用することは難しいでしょう

理由は、上記でも説明した通り、判断能力はあるが伝えることが難しい。

この場合は、判断ができている、となりますよね。

その反面、身体障害者の方でも判断能力に影響がある、という場合は利用できる可能性がありますよ。

とはいえ、身体が動かせないため手続きには不安がある、という場合には、「日常生活自立支援事業」等の別の制度を利用することもできます。

こちらは、別記事にて紹介しますので、お待ちくださいね。

一例:障害児がいるご両親の場合

障害のあるお子さんがいる場合で、ご両親が”もしも”を考えた場合。

未成年のまま続けて、成年後も財産管理をご両親が補助している、というケースがありますよね。

ただご両親も年齢を重ねれば、認知症などの病気の心配が増してきます。

その時に向けて、成年後見制度を利用することは、可能だと考えます

例えば、両親が認知症になって、判断能力が不十分になってからでは困るので、事前に信頼できる人と任意後見制度を契約しておく

その契約の中で、障害のあるお子さんのことを、盛り込むことも考えられますよね。

いずれにしても、制度を利用するかは即決しないまでも、利用するためには準備も必要です。

制度を知っておく、選択肢を増やしておく、ということは大切にしたいですね。

まとめ

成年後見制度について、ご紹介をしてきました。

今回は、制度の紹介として、内容や利用した場合の費用等に要点を絞っています。

ただこの制度は、諸刃の剣のような一面もあり、メリット・デメリットが大きいのも特徴

次回は、成年後見制度のメリットやデメリットを紹介しますね。

参考リンク

・法務省 成年後見制度・成年後見登記制度(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji95.html

・裁判所ウェブサイト (https://www.courts.go.jp/

・厚生労働省 成年後見制度利用促進のご案内(https://guardianship.mhlw.go.jp/

ファイナンシャルプランナー 山口 真未

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