こんにちは!障害者ファイナンシャルプランナーの山口真未です。

人生に早々何度もないであろう、家の購入というイベント。
何度もないからこそ、悩み事も多いですよね。
今回、ご相談をいただいたので、了承を得て皆さまにもご紹介しますね。
- 契約が遅くなると、税金で損をするって本当?
→税金の話は、一部本当 - 11月までに、マンションを買った方が良いの?
→マンション購入の決め手は、税金ではない!「自分が納得して住みたい」と思えるか
ご相談の内容

先日、ライフプランサービスを受けたお客さまより、ご連絡をいただきました。
もともと、ライフプランサービスを受けるきっかけが、「マンションを購入したいから」
ご相談内容としては、「いくらまでなら、ローンを組んでも大丈夫か」「ローンを組むときの注意点は?」「老後まで見据えて大丈夫か見て欲しい」など。
これらの疑問は、既にライフプランを作ったため、クリアしていました。
そんなお客さまから焦った様子で、ご連絡いただいた相談内容、紹介しますね。

今、ライフプランサービスでわかったローン金額を目安に、マンションを探していたんです。
そしたら不動産会社からのチラシで、「11月までに買わないと、税金に差が出る」と書いてあって。
しかも、差額の金額も結構、大きな金額なんです。
11月までに、良い物件が合ったら買った方が良いのでしょうか?
ご相談ありがとうございます!
確かに、不動産会社からのチラシで、まざまざと「これだけの金額に差が出ますよ!しかも契約の時期が少し遅くなるだけで!」なんて言われたら。
不安になる気持ちも、よくわかります。
少しだけ冷静になって、この2点を客観的にこの問題を見てみましょう。
そもそも住宅ローン控除とは

まずは、11月までに買わないと損なのか?という点。
これには「住宅ローン控除」という、税金の制度によるものです。
税金の制度について、簡単にですがご紹介しますね。
通常のルール
「住宅ローン控除」 とは、住宅ローンを組んで家を買ったときに、一定の条件を満たせば 入居から10年間は、 税金が安くなるという制度。
住宅ローンの年末残高 × 1% = 控除額(上限40万円)
この計算式により、納める所得税等の範囲内で、減税されるものです。
10年間とは言え、税金のメリットがあるため、節税効果が大きいですよね。
特例のルール
この住宅ローン控除のルール、限定的に制度が変更になっています。
理由は、2019年10月に消費税増税があったため。(適用には一定の条件があります)
この消費税増税に合わせて、特例として控除期間が13年に延長されています。
条件があるものの、10年間だったものが13年間に伸びるとあれば、たった3年とはいえ嬉しいですし、ぜひ利用したくもなりますよね。
その特例期間が、注文住宅の場合は2021年9月末、分譲住宅や中古住宅の場合は、2021年11月末までに契約することが必要です。
(本来、特例期間はもっと前に終了予定でしたが、コロナにより延長されています。)
そのため、11月までに契約したら、お得!となるわけですね。
不動産会社のチラシを大胆に、推察!

税金のメリットが無くなるから、不動産会社の方でも、期間限定のお話を強調しているよう。
しかし「お得だから、今すぐ急げ!」といわんばかりの不動産会社のチラシ。
その言葉は、何故かな~?と思い、私が個人的に背景を推察してみました。
(ちなみに、たまたま不動産会社の方とお話する機会もあったので、聞いてみたお話も含めての推察です(笑))
1%控除の見直し案
まず「住宅ローン控除」の法改正が、案として出ている、という事実があります。
上で紹介した通り、現在は「住宅ローン残高の1%」がベースとなっていますよね。
ただしこの「1%」という、数字が問題。
現在、住宅ローンを変動金利で借りた場合、多くの金融機関で金利は1%を下回っています。
金融機関に支払う利息が、1%も払っていないのに、税金では1%も節税される。
節税効果が大きい、ということは、その反面として過度な節税目的のローンなどもあるのではないか、と政府では議論されています。
そのため早ければ、2022年度の税制改正で見直されるかも、と言われています。
そのため今なら、 「住宅ローン残高の1%」 が節税できるけど、未来は節税額が少なくことで購入意欲が下がるのでは・・・
そんなお話が、不動産業界では言われているのかな、と思います。
しかし税制改正は、あくまで言われている、だけで、まだ決定ではありません。(記事執筆時)
しかし!実はご相談者様に見せてもらったチラシには、既にこのお話が反映されていました。
まだ決定ではない、けど、反映したら金額の差額は当然、大きくなりますよね。
ちょっと焦りを生ませたい、みたいな意図が見え隠れしますね。
不動産会社の先行き不透明感
更に不動産会社全体の問題として、先行きの見通しがあまり明るくないということ。
もともと家やマンションなどの購買意欲が、下がっているというお話、聞いたことありませんか?
価値観の変化や仕事・ライフスタイルの変化により、「結婚や子供の出産=家を買う」とは言えないですよね。
それこそ「賃貸VS購入」なんて、常に話題になり続けていますから。
さらにこの1年程度はコロナの事情もあり、なかなか不動産を販売しにくい状況でした。
しかし、コロナによる考え方やライフスタイルの変化。
これにより「家」そのものに対しても、価値観が変わった人も多いですよね。
ここ数年、購入する需要が下がっていた中で、この好機を逃すと・・・・という理由もあるのかと思います。
その結果、不動産会社としては、「税金がお得になる今!契約する時期が大切!だって、こんなに損するよ?」というお話に繋がるのかなと考えます。
まずは「何が」重要か

さて、そんな不動産会社の税金のあれやこれやですが、過大ではありますが、事実には違いありません。
11月までの契約である税金控除期間の延長は、やはり無視しづらい。
しかも更に、税制改正があるかも!?なんて、聞けば焦りますよね。
しかしFPとしては、「お得」よりも大切にして欲しいことがあります。
その内容を紹介しますね。
「自分が納得できる物件か?」
まず絶対に大切なのが、「自分が納得して、この家に住みたい、と思える物件かどうか」ですよね。
もちろん、私なんかが言うまでもないかもしれませんが・・・
「お得」「損するよ!?」と言われると、つい流されてしまうのも人間です。
しかし実際に住むのは、不動産会社でも販売会社でもなく、あなた自身。
家は住みやすそうかな、立地はどうかな、通勤があるなら駅までの道のりは?
将来まで見据えて、周囲の環境なども見ておきたいですよね。
病院やスーパーなどの買い物場所、安全面のハザードマップなどなど。
気を付けたいことは、山のようにあります。
それらを全て確認して、住みたいな、と思えるかどうか。
これが何より、大切なことではないでしょうか?
未来まで見据えたお金計画=ライフプラン
さらに物件の情報だけでなく、住宅ローンを組むための予算も、とっても大切です。
購入したら賃貸とは異なり、色々なお金が掛かることになりますよね。
固定資産税や火災保険、地震保険、マンションなら管理費など。
これらのお金は、ローン返済後も不動産を持ち続ける限り、ずっと必要なため老後まで見据えることも大切。
もちろん住宅ローンの金額も、毎月返済しなければなりません。
「住宅ローン」と言っても、借金に変わりはありませんから、きちんと計画をして欲しい。
仮に仕事が不調で残業代が減ったから、ローンの返済が苦しい・・・となる未来は、やっぱり悲しいですから。
しかもそのローンで払っている家が、慌てて決めていて、なんか早まったかも、なんてなったら。
そう想像したら、未来まで見据えたお金の計画、ライフプランをしっかりと立てて決断したいですね。
(まさか、自分で計算することなく、不動産会社や銀行の言う「ローンはこれくらい大丈夫です、返せますよ」の言葉、信じていませんよね?)
ご相談者様への結論
2つの問題点について、検証してきました。
問題点は事実のお話と、金額は大きく見えるように、少し過剰になっていましたね。
では、ご相談者様の「11月までに、良い物件が合ったら買った方が良いのでしょうか?」について。
確かに税金制度の話は事実ですが、住宅購入の決め手は本来、違うはずですよね。
結論として、物件をよく見学して、納得できるか、自分で購入したい、と思えるか。
その意思を大切にして欲しい、とご相談者様にはアドバイスしました。
また不動産会社のチラシには、事実だけでなく不確定要素も入っているため、差額の金額は気にしすぎないことも大切、とお伝えしました。
「お得」の言葉に振り回されないで

不動産会社のチラシに書いてある、「契約が遅くなると損かも」「今ならお得」という言葉。
もちろん、ちょうどいい物件が見つかってて、という話ならスケジュール調整頑張って、契約しましょう!となりますが・・・
住宅の購入は、焦って決断してもいい、という話ではないはずです。
今の生活が変わるだけでなく、未来まで大きく変えるお話。
「今ならお得」との言葉で、「未来の不幸」を選択するのは悲しいですよね。
税金のお話など、特に損をしたくない、という気持ちからは一歩引いて、客観的になりたいとき。
お金の話を冷静に見たいときなどにも、第三者でもあるファイナンシャルプランナーへのご相談がオススメですよ。
ファイナンシャルプランナー 山口 真未
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