こんにちは!障害者ファイナンシャルプランナーの山口真未です。
今の大人世代の時代には、お金の勉強って学校の授業でなかったですよね。

今さらですが…お金の授業を受けたかったな、と思っています!
そんな人へオススメの1冊をご紹介!

お金の”本質”とは
お金にまつわる本は、数多くありますよね。
本屋さんに行けば、初心者向けの本から専門書まで、何種類も販売しています。
しかし、それらの本とは一線を画す。
「お金や仕事のこと、実はわかってなかったかも!」、と本を読み終えた瞬間、思いました。
経済の本だけど、青春小説でもある!?
まず大きな違いは、小説として書かれていること。
中学生が主人公という事もあってか、ちょっと甘酸っぱいストーリーでもあります。
青春だな、と思う面もあり、大人としては微笑ましいかぎり。
ただし、「お金」「仕事」「働くということ」「世の中の仕組み」など、内容は多岐にわたります。
しかも説明だけではなく、歴史的な背景や人間の欲などにも触れていく。
もしかしたら、お金の知識に関しては、知っているものばかりかもしれません。
でも歴史的背景や裏の世界、本質を理解できていたかな、と本当に考えさせられました。
「お金を手に入れる」の意味とは
私は漠然と「大人になったら働くもの」「お金は稼ぐもの」という、認識しかありませんでした。
この背景には、お金や経済の本質を学ぶ機会が少ないことが要因かもしれない、と本書を読んで思いました。
例えば、小学生で歴史を学び、中高校生になれば時事問題として少し勉強する。
あくまで断片的に、年齢に応じて行う程度が従来の日本教育ですよね。
”そのせい”とは言い過ぎですが、大人になっても意識はこんな感じでした。
その点、本書では、「お金を手に入れる方法とは?」という基本的な質問からスタートしています。
この質問を投げかけるのが、先生役として登場する大人の男性。
そして答えるのは、生徒の男子生徒と女子生徒の2人。
中学校のクラブ活動として、授業を受けるスタイルで話は展開します。
答えは中学生らしく、とても簡単な言葉。
・かせぐ
・ぬすむ
・もらう
・かりる
・ふやす
・???
この6つの方法が、基本ですよね。
(6つ目の方法は本書を読んでみてくださいね。)
そして面白いのが、ここからの発想の展開です。
世の中にはいろんな職業、いろんな会社、いろんな人がいる。右と左、『かせぐ』と『ぬすむ』を分ける境界線は、どこにあるのか
かせぐ=労働の対価、ぬすむ=犯罪、であることは、先生が提示をしています。
でもよく考えてみると、その線引きは、実に難しい。
中学生の2人は、この問いに対して「仕事が役に立つのかどうか」で答えを探します。
そこで、先生からの初めての宿題。
世の中の役に立つ・立たないは、どう決めるのか
「次回は具体的な職業や仕事について、役に立つ、立たないという物差しで考えてみましょう。それぞれ3つ、具体例を考えてきてください」
あなたなら、どんな職業が浮かびますか?
ちょっと大人でも話し合ってみたくなるような、宿題ですよね。
ぜひ答えは本書を読んでみて、またはご自分なりの答えを考えてから、答え合わせ気分で読んでみてください。
(このあと、少し内容に触れるのはご愛敬で(笑))
本質を考える3つの内容
①お金の善と悪
”キレイなお金”、”キタナイお金”と、ドラマなどでよく耳にしますよね。
その違いは、と聞かれると、また難しい境界線がある気がします。
手に入れる方法=職業で分けるのか、それとも法律で分けるのか。
本書では、この問題にリーマンショックやバイシュンフで説明しています。
リーマンショックの起きた背景・問題点・解決した方法など、中学生には少し難しい、とも思える内容。
しかし、とてもわかりやすく説明し、そして世の中を皮肉ってもいます。
はたや、バイシュンフなんて、中学生に説明する内容か!?と思う面も。
これは本書の主人公である、中学生の男子は困惑しながら、女子は嫌悪感を前面に出しながら、問題に向き合っています。
バイシュンフが最古の職業ともいわれる、無くならない職業を『ぬすむ』に仕分けていいのか。
私個人としては、本書の中で提示された一つの答えに、凄く納得しました。
②『かせぐ』と『もらう』の違い
”お金を稼ぐ”、”給料を貰う”と、何気なく使い分ける言葉ですが、厳格な違いって何でしょうか。
正直、私はあまり考えたことがありませんでした。
少し乱暴ですが、ただの名詞と動詞の組み合わせで、言い方の違いでしょ、程度の認識です。
本書では言葉の違いを、公園の清掃やテストの平均点を例に紐解いていきます。
そして専門用語では、GDP(国内総生産)を取り上げています。
かせぐ→とても役に立つ
もらう→フツー
ぬすむ→役に立たない
仕事を「役に立つ」「役に立たない」では、仕分けるのが難しい。
そこで中間点である、フツーを取り出した。
単純な形ではありますが、実はとても奥が深い話でもあります。
例に倣うなら、公園の清掃を人よりも多くやる人は『かせぐ』人、では、その人は偉いのか?
お金に置き換えると、なかなか興味深い質問だな、と思います。
また私個人としては、実は経済用語がとても苦手です。(ぶっちゃけていいのか、とも思いますが。)
そんな私でもGDP(国内総生産)の説明が、しっくりと理解できたな、と思えました。
③仕事をするということ
3つ目は、金融とは少し離れた話になります。
私個人としては、ぜひ子供から大人、特に経営をするような方等に投げかけたい問題。
言い換えるなら、障害を持つ身としては、思いがけず心が揺さぶられました。
「フツーに入れてもらったのは嬉しいけど、ちょっと甘いというか……もらうだけっていうのまでフツーに入れると、サボってもいい、みたいに聞こえます」
中略
「・・ワタクシに言わせれば、フツー最高、フツーなめんな、ってところです」
そして宿題として、「生活保護」と「障害者」というキーワードが提示されます。
ここから日本国憲法第25条※や資本主義・社会主義・民主主義へ話が及びます。
そして生活保護や障害年金、という流れは、教科書のよう。
福祉の一面として「世の中全体で助け合おう」とは、学校で習ったなと私も記憶があります。
ただし、これだけで終わらない点が本書を紹介したい、と思った理由の一つ。
いわゆる教科書的な一面を説明したのち、中学生たちは社会見学に出向きます。
見学先は知的障害者が多く働くという工場で、「フツー上等」の真意を垣間見ることに。
健常者並みの給料を支払っているとはいえ、つらい作業を押し付けているようだ、とも感じる主人公の中学生への1つの回答。
そういう考え方もわかる。でも、ちょっと考えてみてほしい。じゃ、彼らは、働かないで、自宅や施設にずっといる方が幸せなのかな。・・・」
中略
「・・・社会と接点を持って働く喜びを知る、とても大切なものです。でも、重い障害のある人たちが人並みの給料をもらうのは、我々健常者が考える以上の意味があります。仕事というのは、誇りや生きがいに深く関わるからです」
このあと更に、先生がリアルな日本の今を紹介します。
主人公が中学生だということを考えると、少し重い内容かもしれません。
仕事をすることは、お金を『かせぐ』のか、『もらう』のか。
私は自分の軸をどこに置くのか、自分の基準を問われたような気もしました。
先生の回答は、ぜひ本で、確認してみてくださいね。
※補足
日本国憲法第25条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
中学生だからこその視点とストーリー
お金や世の中の仕組みを、一部でも改めて一歩引いて見ることができる。
本書は、「子供だからこその正義感」と「子供なりの知恵」を組み合わせて、経済や福祉などを紹介しています。
そして紹介した3つの内容以上に、世の中の仕組みに触れていきます。
最終的には「親子問題」や「未来の道筋」など、中学生だからこその話題にも踏み込みます。
小説としてのストーリ性を兼ね備えながら、人の本質までを見ることができる。
普通の経済書などでは、流してしまうような用語も1つずつ考えよう、と思わせてくれる本でもあります。
「お金とは」「仕事をするとは」
本書は、いわゆる「お金に関する本」として、良い投資法がわかる、節約法がタメになる、わけではありません。
しかし、その目先の物以上に、自分にとって「お金って何だろう?」と考えさせられます。
そして「仕事をすることは、自分にとって何だろう?」とも。
本書の主人公と同じ中学生など、仕事やお金のことを真剣に考え始める世代に、ぜひとも読んでほしい、と思える一冊です。
そして、その親世代である大人にも読んでほしい、と私は思います。
著者のプロフィール
ここまで紹介した本書ですが、著者は高井浩章さんというジャーナリストの方です。
もともと経済記者・デスクとして20年超の経験があるそう。
そんな方が、ご自身の娘さんに向けて、家庭内で連載していた小説を改稿したの、とあとがきで書いています。
私個人としては、このあとがきで、本書の内容も納得しました。
1人の親として、自分が知り得た世の中や「仕事をすること」について、良い・悪いを伝えたいと思ったのかなと。
そして子供が読んでくれるように、小説の学園ドラマ風の仕立てにしたとも、語っています。
あとがきを読んでから、もう一度、本書を読むと、言葉1つ1つが感慨深い、と感じました。
まとめ
お金の問題、世の中の仕組み、と言われると尻込みしたくなったり、目を背けたくなります。
でも少しの時間、立ち止まって、お金や仕事について考えてみませんか?
ここまで紹介した本の紹介はこちらです。

ファイナンシャルプランナー 山口 真未
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